毎年2月に入るとニュースや新聞などで“春闘”が大きく取り上げられます。
春闘は全国の労働組合が一斉に賃金の引き上げなどを要求するもので、特に自動車などの大手製造業の動向によって方針や賃金の相場が決まります。今回はトヨタをはじめとした大手自動車メーカーの春闘の日程や時期はいつなのか、また要求内容についてご紹介します。
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春闘2017 自動車業界の日程、時期は?
春闘は賃金の引き上げや労働時間の短縮、雇用の維持、ワーク・ライフ・バランスの実現など多岐に渡る労使条件を労働組合が企業へ要求するものです。
交渉時期は毎年2月から3月にかけて行われます。これは日本の多くの企業が4月を新年度としているので、それまでに労使条件を見直し新しくするためです。
また、労働組合が個別にそれぞれの企業と交渉するとどうしても組合側の力が弱くなるため、同じ産業の組合同士が結束し、連携して交渉します。違う産業の労働組合間のスケジュール調整は、連合(日本労働組合総合連合会)が行います。
2017年は概ね下のスケジュールで行われるようです。
2017年2月2日(木) 連合と経団連(日本経済団体連合会)の労使トップが会談
2017年2月中 大手企業の労働組合による要求の提出
2017年3月15日(水) 集中回答日 予定
2017年3月中 交渉妥結 予定
毎年、春闘の交渉は自動車・電機・鉄鋼などの大手製造業が交渉をはじめ、続いて鉄道や電力会社など非製造業が交渉します。これらの大手企業の労働組合は2月中に要求を提出し、企業側は3月中旬に集中回答して年度内に妥結を目指します。
このスケジュールの中で最も注目を集めるのが、製造業の大手各社の「集中回答日」です。
大手企業の労働組合からの要求の中には、賃金におけるベア(“ベースアップ”の略語、基本給の底上げ)実施の有無や年収ベースでどれだけ引き上げるのかなどがあります。それに対して、どこまで企業側が応えていくかによって、その年の春闘の相場が決まります。これらは中小企業にも影響があるので、毎年ニュースで大きく取り上げられます。
中小企業は3月中に交渉を行い、やはり月内(年度内)に妥結します。また、意外ですが公務員も春闘を行います。
トヨタはじめ自動車業界の要求は?
自動車業界は、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業など世界規模で展開している大手自動車メーカーをはじめとした完成車メーカー、部品メーカー、販売会社など幅広産業を抱えていることから、春闘の相場に与える影響が大きく、毎年注目を集めています。
2017年の春闘において大手自動車メーカー各社の労働組合は、2月15日(水)に一斉に要求書を提出しました。
会社名 | ベア(ベース・アップ) | 一時金 |
トヨタ自動車 | 3,000円 | 6.3ヶ月分 |
日産自動車 | 3,000円 | 6.0ヶ月分 |
本田技研工業 | 3,000円 | 5.9ヶ月分 |
富士重工業 | 3,000円 | 6.2ヶ月分 |
マツダ | 3,000円 | 5.3ヶ月分 |
三菱自動車工業 | 3,000円 | 5.4ヶ月分 |
スズキ | 3,000円 | 5.9ヶ月分 |
ダイハツ工業 | 3,000円 | 5.5ヶ月分 |
今年の春闘では、営業利益の減少やアメリカ市場の先行きの不透明さがあるものの、個人消費の回復とデフレ脱却には賃金の引き上げが不可欠との立場から、強気の要求で足並みをそろえたようです。
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企業側の回答予測
自動車総連(全日本自動車産業労働組合総連合会)は、2月15日(水)にそれぞれの労働組合が要求を提出し、3月15日(水)から3月24日(金)までに企業側から回答を引き出そうとしています。現段階では、まだ企業側からの回答が発表されていません。
参考までに2014年から2016年までのトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業のベア要求額と妥結額についてご紹介します。
年/会社名 | 要求額 | 妥結額 |
2014年 | ||
トヨタ自動車 | 4,000円 | 2,700円 |
日産自動車 | 3,500円 | 3,500円(満額) |
本田技研工業 | 3,500円 | 2,200円 |
2015年 | ||
トヨタ自動車 | 6,000円 | 4,000円 |
日産自動車 | 6,000円 | 5,000円 |
本田技研工業 | 6,000円 | 3,400円 |
2016年 | ||
トヨタ自動車 | 3,000円 | 1,500円 |
日産自動車 | 3,000円 | 3,000円(満額) |
本田技研工業 | 3,000円 | 1,100円 |
今年の春闘は前年と同水準の強気の要求を出した大手自動車メーカーの労働組合ですが、企業側を取り巻く環境は不透明さが増しています。
理由の一つとして、2016年4月から12月期決算が円高の影響で営業利益が減少したこと、もう一つは先月アメリカで誕生したトランプ政権が今後どのような経済政策をとるのか不透明であることです。トランプ大統領は就任前から対日自動車貿易について不公平と主張し、実際にトヨタ自動車は名前を挙げて批判しました。
今後のアメリカ政府の出方次第では、北米事業が大きく影響を受ける可能性があります。アメリカ市場での収益次第で会社の業績の良し悪しも変わってくることから、各社ともに警戒を強めて春闘への回答も慎重になりそうです。
まとめ
毎年2月から3月にかけて、賃金の引き上げなどの労使条件の改善を要求する春闘が行われます。中でも、トヨタ自動車などの大手製造業の動向によって賃金の相場などが決まってくるので注目を集めます。
2017年の春闘では、自動車総連はベアを3,000円にするなど強気の要求をしましたが、企業側は利益の減少や、北米事業に対する警戒から慎重な回答になりそうです。
以上、「春闘2017 自動車業界の日程はいつ?要求内容は?」でした。
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